(リンク)小児滲出性中耳炎とは


鼓膜の内側の中耳に液体がたまっている状態です。感染などによる慢性的な炎症が原因になります。 かぜ、鼻副鼻腔炎、急性中耳炎で、中耳に炎症がおこり、中耳の圧力が下がり、滲出液がたまるようになります。

症状について

中耳に液体がたまるために、耳がふさがったような感じ、聞こえが悪くなるなどが起こります。乳幼児は自分で症状が伝えられないので、耳をさわったり、 頭を振る、呼びかけへの反応が鈍くなるなどの行動でわかることがあります。小学生以上では聞こえの悪さを感じることがあります。テレビの音が大きくなったり、 聞き返しが多くなったりします。


どんな人がかかりやすいか?

小学校に入るまでのお子さんに多く、年齢が上がるにつれて次第にかかりにくくなります。1歳までに50%以上、2歳までに60%以上、 小学校に入学するまでに90%の子供が1回はかかると言われています。鼻副鼻腔炎(約70%)、アレルギー性鼻炎(24-89%)、アデノイド増殖症を合併している お子さんは難治化する要因になっています。こうした病気による炎症が耳管咽頭口に波及します。

鼓膜の所見


①滲出液貯留:顕微鏡で観察すると、滲出性中耳炎では滲出液が鼓膜から透けて見えます。液体が貯留していることで、鼓膜の動きが悪くなります。 鼓膜の動きをみる検査(ティンパノメトリ)で、滲出液貯留の有無を確認することができます。

②鼓膜陥凹:滲出液が貯留している期間が長くなると、中耳腔の陰圧が大きくなっていき、中耳と外耳の圧力の差によって鼓膜が奥に引き込まれます。

③鼓膜の菲薄化・接着:さらに長期間液体がたまっていると、鼓膜全体が薄くなったり、鼓膜のへこみが強くなり、奥の骨と接着することがあります。

治療の流れ

診療ガイドラインでは、小児滲出性中耳炎は、3か月以内は、自然に治ることも期待できますので、様子をみることが勧められています。 この間は、検査を行い、病状が悪化していないか観察します。自然軽快することも多いですが、薬物治療としては、粘液溶解薬の内服が勧められています。 アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎がある場合は、滲出性中耳炎に悪影響している可能性があり、これらに対する治療も同時に行います。 3か月以上経過し、中等度以上の難聴や鼓膜の変化があれば、それ以上待ってもなおらないことが多く、鼓膜に小さなチューブを入れる小手術(鼓膜チューブ留置術) が必要になることがあります。
診療ガイドラインで推奨している基本的な流れがあります。
・3か月以内は経過観察します。
・3か月以上遷延し、両耳の40dB以上の聴力低下がある、または、鼓膜の菲薄化など病的変化があれば、鼓膜チューブ留置術を検討します。
・3か月以上遷延しても、上記にあげる病的変化がなければ引き続き経過観察を行います。


薬物治療について

カルボシステインという粘液溶解薬を使用します。この薬には中耳の液体を出しやすくしたり、鼻副鼻腔炎にも効果があります。 副作用もほとんどない安全な薬剤です。アレルギー性鼻炎がある場合は、アレルギーを抑える薬や、ステロイド点鼻薬を使用します。 この場合のステロイドは、ほとんど血液中に吸収されませんので、安全な薬剤です。鼻副鼻腔炎は、軽度の場合は自然軽快するのを待ちますが、 膿性鼻漏が長く続く場合は、マクロライド系の抗生物質を通常使用する量の1/3の量で4~8週間内服することで治療します。


鼓膜にチューブを入れる?

鼓膜に小さなチューブを留置することで、鼓膜換気チューブ留置術といいます。チューブを通して、中耳にたまっている液体が排出され、炎症がおさまります。 聴力の回復や、後遺症としての鼓膜の変形を予防する効果が期待されますが、チューブが抜けた後の鼓膜に穴が残ったり、チューブ感染により耳漏がでるなどの問題点 があります。チューブを入れている間は、定期的にチューブが詰まったりしないか診察を受けてください。

入浴やプールの時に耳栓は不要です。チューブ留置期間は2年間が望ましいと言われていますが、実際には数か月で自然脱落してしまうことが多いです。

チューブ留置は、じっとしていられるお子さんでしたら、外来、局所麻酔で実施可能です。麻酔液を耳内にいれて、20分ほど麻酔をかけた後、 鼓膜切開し、チューブを挿入します。手術操作の所要時間は5分ほどです。

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