主要材料の採取保存方法

1.ロ腔・気道・呼吸器材料
喀痰 口腔内常在菌による汚染を防ぐため、滅菌生理食塩水で2〜3回うがいしてから喀出疾を採取します。できるだけ唾液・鼻粘膜の混入は避けるようにして下さい。
咽頭液 滅菌生理食塩水でうがいした後、滅菌綿棒(シードスワブγ1号付属の綿棒)で病変部をよく擦って粘液を採取して下さい。
2.消化器系材料
糞便 急性期の排出便を採取します。糞便の量は1g程度とし、便容器に入れて下さい。便の状態を含め臨床所見は病原菌検出に大きな手がかりとなりますので、必ずご記入願います。
胆汁 胆管内胆汁(A胆汁)、胆嚢内胆汁(B胆汁)、肝胆汁(C胆汁)のうち、検査には通常、胆嚢内胆汁(B胆汁)を培養します。滅菌スピッツ管に2〜3m1採取して下さい。
3.泌尿器・生殖器系材料
尿 患者自身が採尿する場合がほとんどなため、採尿に際して適切な指示をして下さい。
男性の場合は、陰茎先端部を滅菌水で拭いた後に滅菌ハルンカップ等に取り、直ちに滅菌スピッツ管に入れて下さい。
女性の場合は、膣等の常在菌汚染があるため、充分洗浄してから採尿となります。消毒綿で消毒後、滅菌水を浸したガーゼで数回洗浄します。ガーゼは1回毎に取り替えるように指示して下さい。尿は滅菌ハルンカップ等に取り、直ちに滅菌スピッツ管に入れて下さい。
生殖器分泌物 男性の場合は、陰茎をしごき、分泌物を採取して下さい。
女性の場合は、外陰部を消毒した後、膣鏡を用いて滅菌綿棒で後膣内蓋部より採取して下さい。淋菌を疑われる場合は、菌死滅を防ぐために淋菌分離培地に綿棒で塗付けて炭酸ガス条件下に保持し提出下さい。トリコモナスを疑われる場合は、採取後の綿棒を専用培地(トリコモナス培地)に入れて下さい。
いずれも艀卵器(35〜37℃)で保管(やむを得ない場合は、室温)して下さい。
4.血液・穿刺液
血液 採血に当たり、穿刺部位を充分に消毒して下さい。消毒方法は、70%アルコールで穿刺部位を中心として円を外側に向い描くよう拭いていきます。その後、少し擦るようにします。乾燥後、ヨードチンキで同様の方法で消毒します。血液培養用ボトルは、予めキャップを取り、ゴム上部を70%アルコールで消毒します。培養用ボトルへの血液接種量は3〜10mlです。
接種後の培養用ボトルは、速やかに提出下さい。
髄液 採取に当たっての皮膚の消毒は、血液培養の場合に準じて行って下さい。髄液は、血液培養用ボトルに接種後、速やかに提出して下さい。塗抹検査が必要な場合は、髄液を滅菌スピッツ管に入れ提出して下さい。
5.その他の部位
膿瘍・創傷 皮下組織や粘膜下の閉鎖性膿瘍は、穿刺部位を消毒後注射器で採取し、滅菌スピッツに入れて下さい。嫌気性菌の検査の場合は、注射器で嫌気用指定容器(ケンキポーター)のゴム栓に刺し、注入します。開放性病巣のものは、化膿巣の周囲を清掃後、滅菌綿棒(シーズスワブγ1号付属綿棒)で膿性部を採取し、指定容器(シードスワブγ1号)に入れて下さい。



細菌学的検査におけるご依頼の注意事項

1.材料採取部位ならびに材料名は必ず依頼書に明記して下さい。
2.薬剤投与中の材料採取の場合は、使用薬剤名を依頼書に明記して下さい。
3.目的菌名を必ず依頼書に明記して下さい。
  特に、糞便を材料とする場合は、必ず明記して下さい。


細菌学的検査における検体採取に関する注意事項

1.検体採取は、環境細菌による汚染や常在菌等の混入を極力避けるよう慎重に行って下さい。
2.原則として抗菌剤投与前に採取して下さい。
投与後の採取の場合は、48時間以上経過または次回投与直前(薬剤血中濃度が最も低い時期)に採取して下さい。
3.入院4日目以降の材料は、細菌学的検査に適していません。(提出される場合はご相談させて頂きます。)
4.検体採取後直ちに当社指定の検体容器に入れ、保存条件(ほとんどの検体は冷蔵)を厳守して下さい。
5.菌株接種培地にて、培養・同定をご依頼の場合は、培地を室温にて保存して下さい。

細菌輸送用培地入容器
検査容器 検査材料 推定起因菌
シードスワブγ1号 糞便・一般検体など 腸内細菌・ビブリオ属・カンピロバクターなど
シードスワブγ2号 鼻腔粘液・耳漏・眼疾材料・淋疾材料・膿など ブドウ球菌・腸球菌・レンサ球菌・肺炎球菌・緑膿菌・ヘモフィルス属・淋菌・一部の嫌気性菌など
シードスワブγ3号 咽頭粘液・眼疾材料・淋疾材料・膣分泌物・膿など ブドウ球菌・腸球菌・レンサ球菌・肺炎球菌・緑膿菌・ヘモフィルス属・淋菌・一部の嫌気性菌など